痛みと苦しみを乗り越えるためには?

私たち人間は、意識と感覚を持っています。

そのような人間にとって、避けられないことがあります。

それは、痛みと苦しみを経験することです。

そんな苦しみや痛みに直面したときに、
最も助けとなってくれるのがコンパッションです。

私たちがコンパッションについて考えるとき、

自分がコンパッション(慈悲、思いやり)を
人に与えるときのことを考えます。

でも、コンパッションには3つの形態があります。

人から受け取るコンパッション
自分が人に与えるコンパッション
自分自身へのコンパッション、

の3つです。

私たちは最初、
コンパッションを受け取ることを経験します。

私たちは体内で9ヶ月間母親の胎内で育ちます。
そして、生まれて、歩き、成長する過程で、
両親からの愛情や、周りの人たちの愛情、
思いやり(コンパッション)を受けて育ちます。

そして大人になってからも、これまで多くの
愛情や思いやり(コンパッション)や親切を
多くの人々から受けてきたことでしょう。

そんなあなたが、
これまでの人生で、最も印象に残っている
コンパッションの思い出とはどのようなものでしょうか?

少し目を閉じて、思い出してみてください。

私の場合で言えば、

10年以上前のこと、突然のできごとで
救急車で病院に運ばれて、緊急手術を受けて、
ベッドで横たわっていたときに受けた医師や看護師の
人たちからかけられた思いやりや優しい言葉は、
今でも鮮明によみがえります。

そのときに生命を救ってもらった、
ということもありますが、

病気になって入院しているときなどは、
生命の脆さというリアリティに直面して、
赤子のように無防備で、裸にされたように感じます

そんなときに受けた親切や思いやり(コンパッション)
というものが、どれほど深く心に染み入るものであるか
ということがわかります。

そのようなヘルスケアの状況の中で
コンパッションがどのような効果を患者に及ぼすかについて

1,000人の人を対象に、アメリカの2人のドクターによって
測定された調査があります。

その調査では、患者がコンパッションを受けたときの
生理的効果が測定されました。

それによると、

・自律神経を調整し変化させる 
・血圧を下げる
・トラウマのヒーリング
・痛みの認識を軽減する  
・内分泌腺の機能増進  
・苦痛緩和ケアにおけるQOL(人生の質)の改善

が見られました、

自律神経の調整と変化というのは、

私たちが恐怖や不安に直面したとき、
本能的に「闘うか逃げるか」の反応を起こします。

そんあとき、コンパッションは、
そのような自律神経の反応を調整し、
和らげる効果があるということです。

このようなコンパッションの効果は、

私たちが現在コロナの状況に直面している状況で、
恐怖や不安やストレスに直面している状況に対しても、
現実的な効果があることがあることが示されています。

私たちの人生において、
痛みと苦しみを経験することは避けることができません。

それを避けようとすることは私たちの本能ですが、

それをどのように乗り越えていくのかということが、
私たちが人間として生きていく上で課せられている
人生のテーマです。

そのような痛みや苦しみ、悲しみがあるからこそ、

私たちの人生は深みが増し、
人への共感や思いやりを持つことができるのだと言えます。

そしてそれらの苦しみを乗り越えさせてくれる勇気や
パワーをもたらしてくれるものがコンパッションだと言えます。

そして私たちは、このようなコンパッションを、
苦しみや痛みに直面している人たちにも与えることができます。

苦しみや痛みに直面している人たちに共感し、
思いやりを感じることは、
人間として持つ自然な心情だと言えます、

そして、他人に慈悲心をもち、思いやるとき、

私たちは自分が大きくなって、拡大した感じがし、
深いつながりを感じることができます。

そしてその慈悲心、思いやりを、
自分自身に対しても、もたらすことができます。

実は、このことが一番難しかったりします。

なぜなら、この競争社会の中で、
自分にコンパッションをもたらすことは

自分を甘やかせることで、怠惰になったり、
落ちこぼれてしまうことだと思ってしまったりするからです。

あるいは、

自分にはそんな価値がない
と感じてしまうこともあります。

しかしそのようにして自己批判を強めてしまうことは

逆に、今のチャレンジの多い世界を生きていくことを困難にし、
幸せに生きることから自分を遠ざけてしまうことになってしまいます。

自分の中にあるコンパッションの源泉に気づき、
それを養い育てていくことが、

人生に不可欠な苦しみや痛みをも滋養に変え、
幸せがやってくる扉を開けることになっていきます。

では、そのためにどのようにすればよいのでしょうか?

それに関しては、また次回に。

OAU
えたに